チームUSA アメリカオリンピックトレーニングセンターで行われたレスリングの大会に声をかけていただき、

スポーツ医学チームの一員として参加してきました。

前半はコロラドスプリングスのオリンピックセンターで3日間、ナショナルチーム、オリンピック選手の診療にあたり、

その後の3日間はレスリングの試合の横で怪我、出血、流血の対応をしてまいりました。

クリニックでのアスリート診療は毎日の私の得意分野なので特に問題なく、日常生活の延長なのですが、

このトーナメントでの仕事は非日常であり、少し違ったスキル、技術が要求されます。

飛び散る鼻血を数十秒で止めて試合に戻す。

目の前の怪我での損傷度合いを見極め、試合を中止、または再開する。

怪我をサポートするテープ固定をして試合に戻す。

などが仕事の内容です。実はこれはアメリカではいわゆるATC と呼ばれるアスレチック トレーナーの分野なのですが

私たちスポーツドクター(DC DACBSP)も時々こんな仕事を行います。

3日間で私が見ただけでも、脳震盪、膝前十字靭帯損傷、膝外側側副靭帯損傷 膝内側側副靭帯損傷をはじめとした怪我の処置をしてきました。トーナメントでは鼻血や流血は数が多すぎて話題にもあがらないです。

オリンピックセンターで仕事をすると言うと、『幾らくらい貰えるんですか?』とよく聞かれます。

これは皆様に共通の好奇心なのでしょう(笑)。

今回はそんな疑問に答えてしまいます。

気になる私の日当は、

『0円です』

オリンピックセンターの仕事はボランティアなのです。さらに足代までもが実費です。

宿泊と食事はついてきます。トップアスリート、ナショナルチームと同じのバランスのとれた食事です。

宿泊もトレーニングセンターのアスリート達と同じで、まさに衣食住を共にするので自分もトップアスリートの仲間入りをする様で楽しい時間です。

今回一緒に同行した整形外科医、ATC, 理学療法士が同行しましたが、この方たちは

『はじめての時はオリンピック トレーニングセンターのボランティアに申し込んでから7年間も待った』

と話してくれました。

ボランティアと行っても誰でも入れる枠ではありません。

行けること自体が名誉職なので、特に金銭など誰も気にしないのです。

さらにこのレベルに声がかかるドクター(DC, DACBSP)達はクリニックも成功しており、多少の金銭では動かない人たちです。

しかしながら、このオリンピックセンターで診療を行う度に思うことがありますが、

アメリカチームが私を自分の国のトップアスリートの診療の為に迎えてくださる寛大さです。

何が言いたいかと言うと、私よりももっと見た目も英語も日本人が思う『アメリカ人らしい人』が沢山いるにも関わらず、

実力が認められれば、こんな大きな大切な大会にでも声をかけてくださいます。

私は英語で毎日の生活なので、別に英語に困る訳ではありませんが、アメリカアクセントの英語を話す訳でもないのです。

『日本育ちとか見た目とか言葉とかどうでもいいから、ウチのトップアスリート治してね』

って感じでしょうか。

まだ未定ですが実は『パン アメリカンゲーム』にも声がかかっており、もしかしたらもしかするかもしれません。

そんな私の趣味の様なボランティアのためにクリニックをお休みにしてしまいご迷惑をおかけいたしますが、大変な名誉職で深い理由もあったのです。

ご了承いただければ幸いです。